熊本地震について、年代別や構造の違いで、どんな被害状況だったか、なにが倒壊の原因となりうるかなどについて述べていきたいと思います。

1.熊本地震の建築年代による住宅被害の違い

(被害の大きかった熊本県益城町の安永、宮園、木山、辻の城の集計結果から参照しています。)

1981年6月1日より前の建築確認申請住宅

約30パーセントが倒壊・崩壊

約30%が倒壊、崩壊となっています。(702棟の内225棟)

大破を含めると約50%となっています。

旧耐震基準と呼ばれているもので、地震に弱い建物の割合が多くなっています。

1981年6月1日以降の建築確認申請住宅

約9パーセントが倒壊・崩壊

約9%が倒壊、崩壊となっています。(800棟の内73棟)

大破を含めると約19%となっています。

新耐震基準と呼ばれているもので、被害の割合は、旧耐震に比べてかなり低くなっています。

2000年6月1日以降の建築確認申請住宅

約3パーセントが倒壊・崩壊

約3%が倒壊、崩壊となっています。(242棟の内7棟)

大破を含めると約7%です。

2000年基準と言われるもので、新耐震基準よりさらに、被害の割合が少なくなっています。

新耐震基準との差がかなりあると感じた数値結果でした。

2.筋交い(壁に設置されている耐震のための斜めの木材)について

筋交いは、金物がついていない場合、特に弱く、建物の耐震の弱点となります。

新耐震基準の建物でも、金物が使われていないくぎ打ちだけの事例はよく見られました。

2000年基準と比べると筋交い自体の性能が、かなり悪い印象をうけます。

実際、リフォーム時、内装や外装を解体したときに筋交い部分のくぎ打ち施工を見た場合、引き抜き力には、耐えられないように感じました。

3.地盤(建物を支える基礎の下の部分)について

軟弱な地盤は不利な条件

軟弱な地盤に住宅が建っている場合、地震にはかなり不利になります。

新築住宅を建てる場合、軟弱地盤の場合、建物を通常の1.5倍の強度にしなければいけませんが、熊本地震の場合を見ると、そのようになっていない住宅も多いのではないかと思われました。

また、それほど離れていない場所で住宅の被害に大きな差が出ているところがありました。

地盤の影響があったのではないかと感じられました。

さらに、盛土の部分では、擁壁の被害も多かったようです。

盛土が地盤の場合、周囲の擁壁、建物両方について、かなり危険度が増す可能性があります。

4.直下率について

1階と2階のつながりが大事

直下率とは、1階と2階の柱と耐力壁(地震に抵抗する能力がある壁)がどのくらい上下で、重なっているかを見るものです。

この、直下率が悪いと建物には、不利に働くのではないかとこの地震の後、言われるようになりました。

1階の間取りが広々しているような場合、直下率が低い可能性があります。

5.前震、本震で何度も強い地震に遭って倒壊

何度も強い地震に遭うと、最初の地震で緩んだ部分が、さらにダメージを受けて倒壊することがあるようです。

主に筋交いがダメージを受けていたようです。

最初の前震(最初の大きな地震)では、見た目はそんなにダメージを受けていないように見えたが、本震で倒壊した事例が多くあったようです。

大きな地震の後には、余震にも十分な注意が必要と感じられました。

6.2x4住宅(木造枠組壁工法)や鉄骨造住宅について

2x4住宅や住宅メーカーの鉄骨造住宅については、被害は非常に少なかったようです。

いろいろな地震で見られたことですが、今回も同じような結果となって、基本的に耐震性に優れているようです。

7.建築基準法について

建築基準法のぎりぎり(耐震等級1)の建物の耐震性能のイメージについてですが、わからないとの方も、おられるのではないかと思います。

1981年6月から施行された新耐震基準(耐震等級1)は、震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる。とのことです。

施工している側から感じるイメージとしては、大きな地震が来ると、ある程度の被害が出て、建物が建っている地盤によっては、倒壊もあるのではないかとの感じとなり、倒壊しないとは、言い切れないものです。

今後、耐震補強工事をする場合は、耐震等級3を目指して、筋交いだけに頼らない補強が必要と感じています。

まとめ

地震は、いつ来るかわからないものです。ですが、いざ来た時には、大きな被害が考えられます。

同じ場所に建っていても、被害が大きい建物とそうでもない建物があるのも事実です。

その違いについて、少しでも参考になったのであれば幸いです。